1 開催概要
2017年7月1日(土) Agile Japan 2017 長崎サテライト with NaITE(実行委員長:角田 俊)を以下のように開催しました。当日の長崎は酷暑に見舞われましたが、昨年と同等の14名にて、外に負けずに熱気あふれる雰囲気で開催することができました。
開催日時 | 2017年7月1日(土) 13:00~16:40 |
開催場所 | メルカつきまち 5F会議室 |
プログラム | ■Agile Japan 2017 基調講演 「モダンアジャイル」 Joshua Kerievsky 氏(Industrial Logic社) ■ショートセッション 「アジャイルの魂の紹介」 関 満徳 氏(グロースエクスパートナーズ株式会社) ■セッション 「Agile Japan 2017実行委員によるモダンアジャイル解説」関 満徳 氏(グロースエクスパートナーズ株式会社) ■ワークショップ 「モダンアジャイルワークショップ」 関 満徳 氏(グロースエクスパートナーズ株式会社) ■セッション 「リズムから生まれるアジャイルな開発」 梶田 秀邦 氏(株式会社永和システムマネジメント) |
詳細ページ | https://nagasaki-it-engineers.connpass.com/event/55052/ |
2 セッションの様子
長崎サテライトのセッションは、AgileJapan2017基調講演(録画再生)の他、関 満徳 氏(グロースエクスパートナーズ株式会社)による基調講演解説セッションとモダンアジャイルワークショップ、梶田 秀邦 氏(株式会社永和システムマネジメント)によるセッションを実施しました。
オープニングはAgile japan 2017 長崎サテライト実行委員長の角田 俊 氏からご挨拶させていただきました。本会は昨年に引き続き2回目の開催となりますが、今回もAgile japan実行委員会やサテライトスポンサーの永和システムマネジメント様のご支援により開催することができました。改めて御礼申し上げます。
今回の参加者層ですが、事前の申し込みアンケートからのデータを紹介しました。NaITEの主催イベントに初めて参加された方が約3割、長崎県からの参加4割弱です。長崎県外からも多くの方がご参加いただき、長崎内外のエンジニアが交流されていることがわかります。
次にAgile Japanについてです。Agile Japan を知っていたり参加したりしたことがある方が約85%の一方知らなかったという方が14%いらっしゃいました。サテライトを開催する意義の1つにはアジャイルを広めるということがあると考えます。その意味で、これまでAgileについてあまりご存じなかった方にリーチできたことはとても有意義です。
このように昨年からさらに広がりをもって開催となった本会ですが、各セッション・ワークショップについてレポートいたします。参加者の方はご自身の振り返りに、参加できなかった方は当日の熱気を感じ取っていただければと存じます。
2.1 基調講演「“モダンアジャイル”」
本サテライトでの基調講演はAgile Japan 2017 の基調講演である “モダンアジャイル”(Joshua Kerievsky 氏)の講演ビデオを上映しました。この内容を簡単にレポートします。
アジャイル開発の現場において、スプリント内で仕事が終わらない、プロダクトオーナーの言うとおりに開発していたけれど、作成したものが顧客の期待とズレがあったなどの失敗が良くありました。
アジャイルソフトウェア宣言も出されてから10年以上が経ち、現在のソフトウェア開発には合わない物になってきたため、モダンアジャイルという考え方が出てくるようになったということです。
モダンアジャイルでは以下の4つの考え方がベースとなっています。
- 人々を最高にする
- 安全を前提にする
- 高速に実験、学習する
- 継続的に価値を届ける
モダンアジャイルは「安全」というのがキーの一つとなっており、自転車に乗るまでの練習の過程を例にして説明していました。補助輪を付けて練習することは古い方法になってきており、最近はプッシュバイクというものがあるという紹介がありました。
プッシュバイクはペダルも補助輪もない小さな自転車なのですが、これを使うことでバランスを取る練習をすることが出来ます。プッシュバイクは自転車とは違い転んでも大きな怪我をすることはなく、安全に転びながら練習することが出来ます。
また、日本の高度経済成長時の新幹線を例に、チャレンジングな目標が人々を最高に輝かせるということを説明されました。
そのほか、モダンアジャイルでは、同僚、管理者、顧客全員を最高にさせることも目標としています。また、失敗した人を非難しない環境作りが大切だという説明がありました。
私自身は東京のAgile Japn2017にも参加していたため、基調講演を聞くのは2回目でした。2回見ると理解しやすく、モダンアジャイルの理解を深める事が出来ました。参加者もモダンアジャイルという概念に初めて触れる人が多く、参加者にとっても新鮮な内容になっていたと思います
(記:角田 俊)
2.2 ショートセッション「アジャイルの魂の紹介」
事前告知のプログラムにはありませんでしたが、時間に少し余裕あったことから、Agile Japan実行委員会及びマナスリンク社が企画発行している「アジャイルの魂」という書籍について、関氏にご紹介いただきました。
「アジャイルの魂」という本はこれまで、毎年発行されており今年で三冊目となります。関氏によると、この本は、会社で回覧して、気がついたことを書き込み、議論するなどして活用して貰いたいということでした。
また、毎年発行のテーマがあり、以下のようなテーマになっているということでした。
- 2015年
- 開発者向けの内容。アジャイル開発の最初の一歩目をどうすればいいのかが書かれている。
- 2016年
- 経営者向けの内容。アジャイル開発への期待と、1年間どうだったのかが書かれている。
- 2017年
- モダンアジャイルの解説が書かれている。また、Agile Japanのテーマがシン・アジャイルであるため、「シン」の部分にそれぞれ思い思いの感じを当てはめた内容がかかれている
当日は関氏に書籍をご持参いただいき、参加者はそれぞれ興味深そうにご覧になっていました。
(記:角田 俊)
2.3 セッション「Agile Japan 実行委員によるモダンアジャイル解説」
基調講演のビデオだけではモダンアジャイルの体型的な理解は難しいということで、Agile Japan 実行委員の関氏からモダンアジャイルに補足解説をいただきました。
モダンアジャイルとは、4つの原則、12個のプラクティスからから構成されているということです。
■4つの原則
- 「最高」
- 人々を最高に輝かせる
- 「安全」
- 安全を前提条件にする
- 「高速」
- 高速に実験&学習する
- 「継続」
- 継続的に価値を届ける
■12個のプラクティス
- 「仕事の憲章化」
- プラクティスの一つと紹介されているが、プラクティス全体の話
- リーンスタートアップの活用
- リーンUXの活用
- 頻繁な協調と統合
- ペアプログラミング、モブプログラミング、コードレビューなどの実施
- 安全に失敗出来る環境
- テストとリファクタリング
- 人々への尊敬と感謝
- 日本とは違い、海外では一つの人種などで作業することはもう少ないため、色々な差別をさせない環境の構築が必要
- 非難しないふりかえりを指揮
- フローに集中
- カンバンのフローに集中することで作業に集中できるようにする
- 継続的なデプロイとリリース
- プロダクトコミュニティを形成
- プロダクトコミュニティというのはプロダクトから影響を強く受ける人達のこと。
そのコミュニティから意見を汲み取り、課題を認識していく。
- プロダクトコミュニティというのはプロダクトから影響を強く受ける人達のこと。
- ソリューションを進化
日本人にはあまり理解できないかもしれないが、チームを構成する人々への尊敬と感謝は海外ではとても重要となる等の具体例を示しながら、日本と海外の文化の違いを説明してくださいました。
解説がとても分かりやすく、参加者は基調講演と合わせ、モダンアジャイルについての理解を更に深める事が出来たのではないかと思います。
(記:角田 俊)
2.4 ワークショップ「モダンアジャイルワークショップ」
続けて、関氏より「モダンアジャイルワークショップ」を実施いただきました。
ワークは以下の流れで進行されました。
- 個人ワークショップ(基調講演を聞いた感想や疑問点、現場で抱えている困りごとについて紙に書き出す)
- 1で書いた内容をグループで共有する
- モダンアジャイル4つの原則(最高・安全・高速・継続)のうち、特に議論したいテーマを一人一つ選ぶ
- 同じテーマを選んだ人でグループを作り、選んだテーマについて「定量評価できる指標」を考え、紙に書き出す
- 作成した指標を元に、模造紙にレーダーチャートを作成する
- 他のグループで作成したレーダーチャートを見て、それぞれの指標に対する自分の値を書き込む
- 各グループのレーダーチャートを見ながら共有する
- 今日気づいたこと、今後改善することを紙に書き出す
参加者は、それぞれの現場で抱えている困りごとを共有することで、自分の現場で起きていることが特殊な状況であったり、あるいは他の人も同様な困りごとを抱えていたりすることに気づいた様子でした。また、モダンアジャイル4つの原則についても、議論を通して理解を深められた様子でした。
ワークで作成したレーダーチャートは、短いワーク時間ながらも4つの原則に対して達成状況を定量評価するものとなっており、参加者がそこに自分の値を書き込むことで「そんな現場もあるのか」と自分の現場を相対的に捉える良い機会となったようでした。
ワークショップの最後では関氏より「ふりかえり」の重要性について語られ、「ワークショップに参加して満足するのではなく、現場の改善に結びつけてほしい」という言葉でセッションを締めくくられました。
(記:藤沢 耕助)
2.5 セッション「リズムから生まれるアジャイルな開発」
ワークショップの後には梶田 秀邦 氏に「リズムから生まれるアジャイルな開発」と題してご講演いただきました。
梶田氏は、開発において様々なリズムがあると説明され、それぞれの単位(リリース・イテレーション・一日・実装)を繰り返すことで、リズムをつけスムーズに開発が進められるようになると説明されました。
(図:リズムから生まれるアジャイルな開発 発表資料 p.8)
本発表では、図中のリリース・イテレーション・一日・実装の中で行うアクティビティや注意点について、順を追って解説いただきました。
また、梶田氏は反復型の開発プロセスではよりリズムを作りやすいとされ、そうでない場合は朝会や夕会をすることでリズム付けを行うのが重要であるとされました。
開発において「リズム付け」が重要というのは耳に新しい話でしたが、梶田氏の実際の開発経験に基づいた発表は説得力があり、参加者も興味を持って聴講していた様子でした。
(記:藤沢 耕助)
3 全体雑感・謝辞
本イベントは満席をもちまして最後まで熱を帯びて開催することができました。少し気が早いですが、来年もサテライト開催を検討していきたいと思いますので、このイベントをきっかけに長崎でのアジャイル開発がますます取り組まれていくと幸いです。
本イベントの開催にあたってはAgile Japan実行委員会様や事務局様は勿論、講師の関様、梶田様、魂本をご送付いただいたマナスリンク社など沢山のお力添えをいただきました。この場を借りて深く御礼を申し上げます。長崎のアジャイルを盛り上げていくため、今後ともご支援いただければと存じます。
4 Agile Japan 2017 長崎サテライト with NaITE 実行委員会
本サテライトは以下の体制にて企画運営いたしました。
◆共同実行委員長
池田 暁(NaITE)
角田 俊(NaITE)
◆実行委員
大月 美佳(佐賀大学)
日下部 茂(長崎県立大学)
藤沢 耕助(NaITE)
◆会場スタッフ
木村 良一(NaITE)
すずき しょうご(NaITE)
以上
本レポートのpdfはこちらからDLできます。>AJ2017Nagasaki_report